2011年5月9日月曜日

浜岡原発停止要請が引き起こす混乱

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● ANNニュースより



ウオールストリート・ジャーナル 2011年 5月 9日
http://jp.wsj.com/Japan/node_233266

【日本版コラム】浜岡原発停止要請が引き起こす3つの混乱―追加対策としてPPSの見直しを
by 尾崎弘之・東京工科大学教授

 菅直人首相は6日夜、緊急記者会見を行い、中部電力(中電)に対して浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)にあるすべての原子炉を停止するよう要請したと発表した。
 停止要請の理由として、「今後30年以内にマグニチュード(M)8級の東海地震が発生する可能性が87%」という予測が示された。
 中電が翌日開いた臨時取締役会では対応の結論が出なかった。
 ただ、要請に法的強制力がなく、政府は中電の結論を待つ姿勢である。

 この突然のニュースは、東日本大震災と福島原子力発電事故後の日本経済に更なる混乱を引き起こすと思われる。

■第一の混乱:政府情報への信頼の低下

 第一の混乱は、政府情報への信頼度の低下である。
 今回の停止要請には不思議な面がある。浜岡原発は国の耐震基準を満たしており、震災後に経済産業省が各電力会社に指示した緊急安全対策にも対応している。
 にもかかわらず、何故、浜岡原発のみを停止対象にしたのだろうか。
 この点、「浜岡だけは地震のリスクが各段に高い」という理由を政府は示しているが、緊急安全対策では、そのような大事なことが考慮されていないのだろうか。
 わざわざ政治決断というパフォーマンスをしなければ、経産省の決定を動かせないのだろうか。

 このように考えざるを得ず、政府情報が信じられなくなる。政府への疑心暗鬼が強まれば、原発の立地が集中している福井県の住民は黙っているだろうか。
 確かに、浜岡原発は東海地震の想定地すぐそばに立地しているが、他の原発地域でも直下型地震の可能性は否定できない。
 わざわざ政治決断をしたことで、浜岡原発以外の安全対策は十分という説明の説得力が低下した。

 政府の情報発信は、他にも問題を起こした
 。「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPPEDI)による、放射性物質拡散予測データを「パニックを起こすことを避けるため」という理由で、政府が公表を遅らせた件である。
 しかし、これは新聞とテレビしかなかった時代の言い訳である。
 ネット社会では、政府が情報発信を怠ると、出所と真偽不明の情報がウェブ上に氾濫して、結局パニックを起こしてしまう。
 これが繰り返されると、最もたちが悪い風評被害が起きてしまう。
 すなわち、「政府は隠しごとばかりで、発表する情報が信じられない」という国民の思い込みが広がることである。

 震災後、政府は情報開示に努力していることは認めるが、開示方法を間違えると、致命的な風評被害が起きてしまうことが再認識されなければならない。

■第二の混乱: 電力不足対策の脆弱さ露呈

 二番目の混乱は電力不足対策の脆弱さが露呈されたことである。
 福島原発事故以降に首都圏で発生した電力不足が、今回他地域に波及するきっかけとなってしまった。
 中電と東京電力(東電)の管内は周波数が異なり、中電から東電に融通できる電力は100万kwである。
 この数字は東電の真夏ピーク電力の2%未満だが、電力不足の折には貴重である。
 ところが、浜岡原発が停止すると、この融通も頼りにできなくなる。
 政府は関西電力(関電)に中電への電力融通を要請して玉突きで穴埋めをするようだが、福井県の関電所有原発が一基でも整備ミスなどのトラブルを起こして停止したら、このシナリオも崩れてしまう。
 東電や東北電力管内だけと思っていた電力不足が中部・西日本にも波及する構造となっているのである。

 大停電を回避するためには、電力供給側は停止している火力・水力発電の再稼働、ガスタービン火力発電の新設を急ぎ、電力需要側は工場、オフィス、家庭の省エネを徹底しなければならない。
 これらの対策以外に提案したいのは、4月25日コラム「東北の復興プランは日本の「新たなインフラ輸出」構築のチャンス」 に書いた分散型発電である。
 また、より即効性があるのは、特定規模電気事業者(PPS)の役割強化である。

■見直すべきPPSの役割と電力自由化

 PPSは1999年の電気事業法改正により、大口需要家への電力供給が自由化された際に生まれた業態である。
 三菱商事系のダイヤモンドパワー、東京ガス系のエネットを始め、大王製紙、新日本製鐵なども事業参入している。
 工場の自家発電などの余剰電力などをPPSを通じて、50kw以上の大口需要家に販売するモデルである。
 当初は、大口電力の自由化として注目され、電力料金低下にも貢献したが、大規模かつ発電コストが低い既存電力会社との競争に勝てず、 PPSは現状、頭打ちになっている。
 そこで、PPSが電力会社との過当競争にならず事業を伸ばせる環境整備を行うことを提案したい。
 また、現在は自由化されていない小規模工場、コンビニ、家庭への電力販売も自由化することも得策である。
 こうすれば、東京電力が電気料金を値上げしても、消費者は他社から電気を購入する選択権が得られ、値上げへの理解も得やすくなる。
 PPSの環境整備ためには発送電分離などが必要となる。

 中途半端になっている日本の電力自由化を再検討することは、現状の電力会社が君臨する供給体制を壊すことを意味するのではない。
 失敗したカリフォルニア州の電力自由化と異なり、日本では部分的な自由化がマッチするだろう。
 PPSは廃油などを使用して発電するので、CO2排出量が多いという欠点がある。
 この問題の解決には、日本が、政治的に破綻している地球温暖化対策の枠組みに固執するか、自国のエネルギー調達を優先するかといった議論が必要になるが、詳細は別の稿に譲る。

■三番目の混乱: ハイテク企業の立地選択

 三番目の混乱として、企業の立地選択がある。
 日本経済に対する直接的な損害が最も大きいのは、この問題である。
 3月14日コラム「東日本巨大地震で再確認された首都圏の構造的脆弱さ」に書いた以外に、首都圏の電力不足対策として工場移転を真剣に検討しているハイテク企業が、私が知っているだけでも多数存在する。
 これらの企業の移転先候補として、中電管内も含まれるが、突然の浜岡原発停止要請で、シナリオが狂ってしまった。
 では、関電管内はどうかというと、原発比率が高く、構造的により不安定と言える。
 そうであれは、日本を出て中国に移転しようという動機を企業に与えてしまう。
 日本にとっての産業情報管理、雇用維持のために、この事態は是が非でも避けなければならない。

 原発の維持・管理、分散型電源の開発、PPSの推進は、電力会社の既得権維持や縄張り争いの問題ではない。日本経済の危機管理の問題である。


 石を投げれば波紋が生じる。
 問題はどの程度の大きさかということである。
 述べられていることは、織り込み済みのことで、大した影響は出ませんよ、といったところである。
 何かをすれば、当然ガタつく。
 「想定の範囲」であって、想定外は起こりませんよ、ということのようである。


ANNニュース

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毎日.jp 2011年5月9日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110509dde001040010000c.html

静岡・浜岡原発:停止要請、午後にも受諾 夏場の節電呼び掛け--中部電力

 中部電力は9日午後3時半から臨時取締役会を開く。
 浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の全炉停止を求めた菅直人首相の要請を受け入れることを決定する見通しだ。
 その後、水野明久社長が記者会見し、浜岡原発の停止によって夏場の電力不足が懸念されるため、供給エリアの企業や一般家庭に節電を求めるとみられる。

 水野社長ら同社経営陣は同日午前も電力供給力の確保などについて詰めの検討を進めた。
 現在休止している火力発電所再稼働のための人員の再配置や燃料の追加調達には数カ月かかるとみられ、
 「7月以降も電力需要に対する供給余力が数%程度の綱渡り」(幹部)
状態は避けられない見通し。

 しかし、
 「首相の判断は極めて重い」(首脳)
との判断に加え、地元自治体への原発関連の交付金についても政府が支援する見通しとなった。
 株主から経営悪化の責任を問う代表訴訟を起こされるリスクはなお残るものの、首相要請の受け入れはやむを得ないとの意見が経営陣の大勢となっている。
 その場合、企業などに対する電力使用の抑制などを求める見通しだ。



TBSニュース

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ITmediaニュース 2011年05月09日 17時39分
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1105/09/news079.html

人間生きてなきゃしょうがない」──
 孫社長、政府の浜岡原発停止要請を評価

 政府の浜岡原発停止要請に対し、ソフトバンクの孫社長は
 「政府の判断は適切ではないか」
と評価した。

 政府による中部電力・浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の停止要請について、ソフトバンクの孫正義社長は
 「人間生きてなきゃしょうがない。
 電気料金の値上げなど一時的な不都合はあるかもしれないが、国民を守るほうが大切だ
と述べ、政府の措置を評価した。

 5月9日開いた同社の決算説明会で、報道機関からの質問に答えた。

 孫社長は
 「政府の判断は適切ではないか」
と述べた。
 電気料金の値上げなどが今後見込まれるが、事業への大きな影響はないとの認識を示した。

 Twitterでは原発関連についての発言が多い孫社長。
 決算説明会で原発関連の質問が相次いだことに
 「きょうは決算説明会ですから……」
と苦笑していた。




== 東日本大震災 == 



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