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● ハイジ・ブレスラーさん
● アリソン・ラムさん
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NICHIGO PRESS 2011年11月11日
http://nichigopress.jp/nichigo_news/shinsai/30311/
私の福島滞在記 オーストラリア人の復興への思い
■特別寄稿
私の福島滞在記::オーストラリア人の福島復興への思い
東日本大震災で地震と津波の大きな被害を受け、さらに福島第1 原子力発電所事故という2次災害も起こり、そのつめ跡が今もなお 残る福島県。
そこに、2人のオーストラリア人女性が訪れ、1人は現 在も外国語指導助手(ALT)として福島市に滞在している。
彼女た ちは現在の福島をどう捉え、何を感じたのか。
本紙に特別寄稿して もらった。
★ 皆人間だからこそ、困った時には助け合いたい
ハイジ・ブレスラーさん
TAS州在住のハイジさんは、 日本政府の外国青年招致事業 「JETプログラム」の元参加者 で、2003年から5年間、福島県 いわき市で国際交流員や、地域 の小学校でALTとして勤務。
日本の震災を受け、外務省と観光 庁が企画した元JET参加者を対 象とする「被災地招待プログラ ム」で9月17〜26日、いわき市 に“里帰り”した。
滞在中は、大きな被害を受け た家庭を訪ねる機会もあったと 言う。
「あるご夫婦を訪ねて、家の 周りのお掃除を手伝わせていた だいたのですが、地震でたくさ んの屋根瓦が落ち、津波で家に 砂が流れ込んできたのだそうで す。
その日、私たちは、砂や屋 根瓦を取り除く作業をしまし た。
“当たり前のこと”が当たり 前じゃない、福島はそんな時代 を迎えようとしているのだと思 いました」
一方、放射能汚染についてハ イジさんは、
「目では見えない から、どの土が汚染されている か分からなかったし、これから 環境や人々にどんな影響を及ぼ すのかも見当がつかなかった」
と言う。
また現地では、国内の 観光産業への影響も大きいとの 懸念があることも、ひしひしと感じていたそうだ。
しかし外国人として、被災地 の復興に貢献できることも、滞 在を通して確認できたと言う。
その中でも、やはり募金活動の 存在は大きかった。
実際に、家 をなくしたハイジさんの友人が 赤十字から物資の支援を受け て、生活が少し楽になったのだ そうだ。
また、日本を訪れるこ とが観光産業復興ひいては福島 県復興の大きな助けになると、 改めて感じたと言う。
「私たちは皆、人間だからこ そ、困っている時はお互いに助 け合っていきたいですね」
★ 滞在することで、福島は安全だという証明に
アリソン・ラムさん
● 近所の居酒屋で常連客の皆さんと
シドニー出身のアリソンさん は、2011年7月23日から福島県 福島市に滞在している、現役の JETプログラム参加者だ。
現在は ALTとして、市内の小中学校で子 どもたちに英語を教えている。
今から6年ほど前、当時大学生 だったアリソンさんは、日本の 大学に4カ月間ほど留学した。
し かし現地の友達ができなかった 上、日本文化を肌身で感じる機 会も持てなかったことを、ずっ と後悔していたと言う。
そして リベンジを試み、2008年にJET プログラムに申し込んだが、こ の時は選考からもれてしまい、 11年の2度目の応募で、やっと 参加できることになった。
けれ ども日本の震災で原発事故が起 き、豪州のメディアでも大きく 報道された、“あのフクシマ”に 派遣されることに。
案の定、両親や友人からは放 射能汚染を懸念して、ずいぶん と反対されたそうだ。
もちろん アリソンさん自身も不安だった ので、医者を訪ね、汚染のリス クなどについて相談した。
しか し、実際にどの程度のリスクが あるのかは分からず、世界保健 機関(WHO)などが出す情報 を参考にするしかないと言わ れた。
それでも
「こんなに長 い間、日本での生活を夢見たん だ。
2度とこのチャンスを逃し たくないし、リスクを負ってで も行くしかない」
と、皆の反対 を押し切り、福島に向かった。
現在、福島第1原子力発電所か ら60キロ離れた福島市に住むア リソンさんは、現地の様子につ いて、
「いろいろな所で “がんば ろう” “負けねえぞう” という言葉 を目にします。
福島市は比較的 安全な地域に指定されていて、 私たちはごく普通の暮らしをし ています。
けれども、これは “た てまえ” だと思う時もあり、実際はとても不安に 思っている人が たくさんいるよ うに感じます」
と言う。
勤務す る小中学校で も、疎開のため に原発20キロ圏 内から転校して くる子どもたち や保護者に対し て心のケアをす るなど、慎重に 対応するよう気を付けているの だそうだ。
放射能汚染の影響については、 今のところ何も感じられず、市民 の人は皆、政府などから来るガイ ドラインに従い、
「例え内心では 不安に思っていても、できるだけ 落ち着いて生活するように努めて いる」
という。
一方、子どもたちは驚くほど 元気でたくましく、特に小学 生は英語が分からなくても無邪 気に接してくれるのだそうだ。
「ティムタムの端からミルクを 吸い上げる“ティムタム・スラム” を子どもたちに教えると、英語 で数を数えるよりも早くそのワ ザを習得してしまいました。
皆 ともっと仲良くなりたいです !」
● 中野小学校でテイムタム・スラムに挑戦する子どもたち
外国人として被災地の復興に 貢献するには、やはりアリソン さんも観光を推薦する。
「最 近、日本への往復航空チケット が当るキャンペーンなどもあり ますし、これを機会にもっと多 くの人に日本を訪れてもらいた いですね」。
それではJETプログラム参加 者として、アリソンさんはどの ように被災地の支援をするのだ ろうか。
「“あの福島に行くなんて、す ごい勇気だね”と、こちらに来る 前にたくさんの人から言われま したが、私はただ単に日本で住むという夢を叶えるために来ま した。
しかし今は、私が長期滞 在することで、“福島は安全だ” という証明になりたいと強く思 います」
「帰国後は今までにない達成感 を得られるように、悔いのない 生活を送りたい」
と言うアリソ ンさんにエールを送りたい。
■JETプログラムとは 海外諸国との相互理解と日本の国際化促進 を目的とし、日本の総務省と外務省、文 部科学省の協力の下、自治体国際化協会 (CLAIR)が1987年以来毎年実施している 外国青年招致事業。
参加者の主な職種は、 小・中学校で語学指導をする外国語指導助手 (ALT)と、各地域で国際交流活動に従事 する国際交流員(CIR)で、参加者の90%が ALTとして日本のさまざまな地域に派遣さ れている。
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