2011年12月15日木曜日

特:陸前高田一本松

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● 一本松に残されていた種子から誕生した後継樹の苗(住友林業提供)



河北新報 2011年12月15日木曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/12/20111215t35014.htm

陸前高田「奇跡の一本松」種子から苗18本育成 住友林業
 
 岩手県陸前高田市の景勝地・高田松原で、東日本大震災の津波に耐えて残った「奇跡の一本松」の後継樹育成に取り組んできた住友林業(東京)は14日、東京都内で記者会見し、種子から苗18本の育成に成功したと発表した。
 震災後、一本松の種からの子孫誕生は初めてという。

 同社は種からの実生苗に加え、挿し木、接ぎ木、組織培養を試み、接ぎ木でクローン苗3本の増殖も果たした。
 実生苗は照度、温度、湿度などを調節した人工気象室でポットに植えられ、約4センチまで生育している。

 プロジェクトは、日本造園建設業協会岩手県支部などの依頼を受けて4月下旬にスタートした。
 研究者、技術者計5人を現地に派遣して枝や松ぼっくりを採取し、同社筑波研究所(茨城県つくば市)でバイオ技術による育成を開始した。
 松ぼっくりを細かく解体し、内部に残っていた種子25粒を回収。
 試験的に3粒をシャーレにまいたが発芽の兆候がなかったため、冬越しの状況をつくって成熟させようと、半年ほど低温処理した。
 その種を再びまいたところ、18粒から芽と根が出たのを確認した。
 苗が順調に生育すれば来春には温室、次の春には畑に移される見通し。
 植栽可能な30~50センチになるには、7~8年の期間を要するとみられる。
 将来的には陸前高田市内に移植する方針という。

 一本松は約7万本あった高田松原で唯一残った「復興への象徴」だったが、海水などの浸食で根が損傷し、生育への保存活動を断念せざるを得ない状況になっていた。
 住友林業筑波研究所の中村健太郎主席研究員は
 「一本松は残念な結果になったが血筋は残り、希望の道は途絶えていない。
 まだ小さく弱い光だが、復興に一役買ってくれると思う」
と話した。




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